住まいと健康

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住宅の24時間換気設備の効果発揮にはメンテナンスが重要

健康で快適な室内環境を維持する上で、室内の空気を新鮮な外気と入れ替える「換気」はとても大切だ。
コロナ禍では、感染症を防止する観点からもその重要性が注目された。
日本では約20年前に、全ての建築物への24時間換気設備の設置が義務化されている。
換気設備がその効果を発揮するには、日頃のメンテナンスが肝心。
ところが、6割もの人が「一度も掃除したことがない」との調査結果もある。
大掃除や換気に対する意識が高まる冬に、改めて換気設備のメンテナンスの重要性を確認したい。

 

24時間換気設備の義務化のきっかけはシックハウス対策

当時社会問題になっていた「シックハウス症候群(※)」対策として2003年7月1日、改正建築基準法が施行され、原則として全ての建築物に24時間換気設備(機械換気設備)の設置が義務付けられた。

 

これにより、住宅の場合、換気回数が0.5回/h以上となる換気設備の設置が必要とされた。

つまり、1時間で部屋の空気の半分が入れ替わることになる。

 

建物の気密性能の向上を背景に、室内の空気をきれいに保つため、住宅全体の「計画的な換気」が求められ、住宅のつくり手はそれを考えた設備設計に取り組んでいる。

 

計画換気のイメージ

 

※建材や家具などから発散される化学物質が原因と見られる、のどの痛みや吐き気、頭痛などの健康被害

 

 

換気による効果はシックハウス対策だけにとどまらない

この3年間、世界中の人々を悩ませている新型コロナウイルスなどの感染症対策でも、換気の重要性が繰り返し強調されている。

 

そもそも、室内の空気やホコリの滞留を回避し、カビやダニの発生を抑え、生活臭や空気の汚れを改善して、健康・快適な室内環境を整える上で、しっかりした換気は欠かせない。

 

住宅の断熱性能・気密性能が向上した現在では、なおさら必要性が増している。

 

換気設備の掃除は「一度もない」が多数派!?

2022年8月、三菱電機株式会社が衝撃的な調査結果(※)を発表した。
換気設備の義務化から1年後の2004年以降に建てられた家に5年以上暮らす全国の20~60代の男女500人を対象にした調査で、24時間換気システムを「掃除したことがない」との回答が60.0%にのぼったという。

掃除をしたことがある人でも、その頻度は「1年に1回以下」が39.5%を占め、満足に掃除されていない実態が浮き彫りになった。

さらに、24時間換気システムが自宅に設置されていることを「知らない」が39.4%。
知っていても「24時間稼働させていない」が44.0%にのぼり、せっかくの設備を活用できていない人が多いことも明らかになった。

これでは換気の効果が著しく損なわれ、室内環境の悪化を招いてしまう。

※「室内の空気環境を整える『24時間換気システム』一度も掃除をしたことがないという人が6割にも!」(2022年8月4日、三菱電機換気ソリューションPR事務局)

 

掃除によって換気量が2.4倍に

換気設備のメンテナンスを怠ると、住宅への影響や換気量の変化はどうなるのだろうか。
北海道住宅新聞の記事(※)は、札幌の設備会社による築約20年の住宅の換気設備の掃除に同行し、その実態を伝えている。

記事によると、住まい手は一度も掃除をしたことがないどころか、「そもそも、どこに設置されているのかも知らなかった」という。
しかし、内部結露を主因とする外壁の劣化をきっかけに、その原因が換気不足によるものと判明した。

掃除当日の測定では、4カ所ある排気グリルのうち2カ所は換気量ゼロ。
もう1カ所も換気量が「ごくわずか」しかなかった。

掃除すること2時間。
「住宅全体の換気量を測定すると、清掃前の51.2㎥/hから124.0㎥/hまで回復していた」という。
住まい手の「空気の流れを感じる」との感想から、住宅全体の「計画的な換気」がいかに大切か伝わってくる。

※「換気性能は掃除が生命線」(2022年11月25日掲載)

 

定期的なお手入れで空気環境を健康・快適に

寒い冬はついつい換気を避けたくなるが、24時間換気設備を止めてしまうと、空気の入れ替えが正常になされず、結露やカビ、ダニ、感染症などのリスクに脅かされることになる。
定期的にお手入れしてフィルターが詰らないようにするなど、メンテナンスに気を配り、室内の空気環境を健康で快適に保ちたい。