住まいと健康

Health

熱中症にならないためにリスクと対策の再確認を!

毎年の猛暑が当たり前のようになった日本の夏。
今年は5月17日に岩手県内各地で今年初の真夏日、翌日には仙台市が観測史上3番目の早さで真夏日になるなど、今後の厳しい暑さが心配されます。

そこで気を付けたいのが熱中症です。
これまでも、「猛暑」の年は熱中症で救急搬送される人が増加しています。
例えば2022年は、気象庁が夏場(6~8月)の平均気温について、「1898年の統計開始以来、過去2番目の高さ」と発表しました。
この年5~9月の熱中症による救急搬送者数について、総務省消防庁は前年同期から約1.5倍増とのデータを公表しています。

一方で、今年は電気料金の値上がりが伝えられるなど、暑さ対策に頭を悩ませている人は多いのではないでしょうか。

しかし、熱中症は命に関わる重大事。
夏を前に、改めてそのリスクや対策を確認していきましょう。

※当サイトの過去記事(「思い込みが危険を招く! ~室内における熱中症リスクとは~」2021/06/29「共同住宅・集合住宅で高まる暑熱災害のリスク」2019/08/30など)も参照

高齢者は特に注意を!

あらゆる世代で気を付ける必要がある熱中症ですが、特に注意したいのが高齢者です。 前掲の消防庁の調査では、2022年の夏場に熱中症で救急搬送された人の54.5%が65歳以上の高齢者でした。

高齢になると暑さを感じにくくなるほか、体温調節機能も低下して体に熱がたまりやすくなり、熱中症のリスクが高まることが指摘されています。

熱中症の最も多く発生するのは室内

先ほどの消防庁の調査によると、発生場所で最も多いのは「住居」で39.5%(2022年)。
この調査が対象とする2018年以降は4割前後で推移しています。

ここから見えてくるのは、熱中症リスクの高い高齢者が住居などの室内で発症するケースが多いという実態です。

熱中症予防の指標「暑さ指数(WBGT)」

熱中症予防を目的とした指標に、1982年に国際基準として位置づけられた「暑さ指数(WBGT/湿球黒球温度:単位℃)」があります※1。
人間の熱バランス(人体と外気との熱のやり取り)に与える影響が大きい「気温」「湿度」「輻射熱(ふくしゃねつ)」に着目し、数値化したものです。


屋外
暑さ指数(WBGT)=1(気温):7(湿度):2(輻射熱)

屋内
暑さ指数(WBGT)=7(湿度):3(輻射熱)

湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、熱を体外に放出する力が減って、熱中症になるリスクが高まるため、屋内外とも湿度が重視されています。
数値が大きいほど熱中症の危険が高まり、暑さ指数が28を超えると熱中症の患者発生率が急増するとされています。
環境省は「熱中症予防情報サイト」https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.phpで全国約840地点の暑さ指数を公表しています。

※1 暑さ指数の単位は摂氏度(℃)ですが、これは気温を表す℃とは異なります。暑さ指数はあくまで熱中症予防のために、人体が感じる熱を気温・湿度・輻射熱をもとに算出した数値です。

熱中症警戒アラートが発表されたら予防のための行動を

近年の熱中症による死亡者数・救急搬送者数の増加傾向や気候変動による影響などを踏まえ、政府は2021年4月から全国を対象に、暑さ指数をもとにした「熱中症警戒アラート」の運用を始めました※2。
各都道府県内のどこかで暑さ指数の予測値が33以上になった場合、前日の夕方5時頃か当日の朝5時頃に該当する都道府県に対して発表されます。

アラートが発表された場合の具体的な予防行動も示されています(気象庁ホームページhttps://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/nettyuusyou_yoboukoudou/index.html)。

※2 環境省「熱中症予防情報サイト」https://www.wbgt.env.go.jp/alert.phpから熱中症警戒アラートの発表状況が確認できます。

就寝中の温度・湿度も要注意

昼間に比べて外気温が下がる夜間も注意が必要です。
特に鉄筋コンクリートのマンションは、木造住宅と異なり朝まで室温が下がりにくく、夜になっても室温が上がり続けることもあります。
昼間に屋根や外壁がため込んだ熱が、夜になり長時間にわたって室内に放出されるためです。
就寝時にエアコンを止めてしまうと、温度・湿度が上昇して熱中症のリスクを増大させてしまいます。

熱中症リスクを低減する主な対策

その① エアコンの適切な利用

環境省は夏場の室温の目安を28℃としています。 適正な室温を保つために、エアコンの適切な利用に加え、サーキュレーターで室内の空気を循環させたり、除湿をしたりするなど、高温多湿な状態を回避することが大切です。

その② 建物の遮熱対策

日射熱による室温の上昇を抑える「遮熱」対策も有効です。

建物の軒を深くして夏の日射を遮ったり、外からの熱の出入りが最も大きい窓や壁などの断熱性能を向上させた上で、シェードなどで日射を防いだりすることができます。

シェードやオーニングなど、窓の外側で遮熱するのが効果的

高断熱の家は対策の効果をさらに高める

高気密・高断熱の家は夏の暑さにも強さを発揮します。
気密性と断熱性能に優れた家は、暑い外気の影響を受けにくいため、エアコンによる冷房効率が高く、光熱費の抑制にもつながります。

しっかりとした対策で厳しい暑さをしのぎ、健康で快適に夏を過ごしたいですね。