住まいと健康

Health

【アーカイブ企画】ゼロエネルギー住宅が生み出す健康の付加価値/伊加賀 俊治氏 慶應義塾大学 教授

株式会社北洲 ×大人の情報誌「りらく」コラボ企画でお届けした「住まいから健康を考える」( 2019年〜2020年)。全12回にわたる連載の中から、特に反響の大きかった回を厳選してご紹介します。今だからこそ改めて読み直したい、時代に左右されない「住まいと健康の深い関わり」をぜひご覧ください。

※本記事は2020年4月号掲載当時の内容を基に構成しております。

 健康に良い住まいにしたいと思いながら、コストの面で二の足を踏んでいる方は少なくないことでしょう。

 2020年1月27日に宮城県の再生可能エネルギー室が開催した「省エネ住宅セミナー」は、そうした消費者に健康とコストの両面から、省エネ住宅の必要性を解説するものでした。

 セミナーの中から、慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科の伊香賀俊治教授と、北洲総合研究所の石原英喜所長による講話を紹介しましょう。

伊香賀俊治氏

慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科 教授

慶應義塾大学先導研究センター 環境・エネルギーセンター長

住環境を改善することで健康長寿につなげたいと、大規模実測調査などを展開するなど、第一線での研究に取り組む

室温18℃以下の家は 高血圧の発症者が6.7倍に

 住環境を改善することで健康長寿につなげたいと、長年研究者の視点から調査しデータを集めてきました。WHO(世界保健機関)では、冬の住まいの室温を18℃以上にするように強く勧告しています。

 国ではCO2削減を目指して高性能・再生可能エネルギーによるウェルネスZEH住宅を推進しており、さらにその削減目標をゼロからマイナスとするLCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅の研究に着手しています。そうした中、私たちは、CO2を削減するとともに健康に暮らせて翌日の活動能力が高まる住まい「慶應型共進化住宅」の提案を行ってきました。

 その一環として、高知県檮原町(ゆすはらまち)で体験型本格木造モデル住宅を建設し、町民の皆さんに体験宿泊してもらい血圧や心拍数を調べました。また、町民の1/3の協力を得て住宅の室温を測り、10年後の追跡調査も実施。その結果、室温18℃以下の家に住んでいる人は、18℃以上の家に住んでいる人に比べると高血圧発症者数が6.7倍になっていました。

家屋内の温度差による血圧への影響は高齢者と女性に顕著に現れる

 国土交通省のスマートウェルネス住宅等推進調査事業で、実際に断熱改修した家の、改修前と改修後の居住者の健康への影響を検証した結果、血圧については有意(※)に改善、夜間頻尿が有意に減少、住宅内身体活動量が有意に増加といった成果が出ています。

 日本高血圧学会でもこの結果を踏まえ、「高血圧治療ガイドライン2019」に、減塩や運動、節酒とともに防寒・暖房を組み込み、冬季には暖房に配慮すべきであるといった注意を促しています。寒冷住宅は暖房している部屋としていない部屋では温度差が大きく、これが末端の血管の収縮・拡張を繰り返させることとなり、高血圧・動脈硬化・循環器疾患につながるリスクを高めているわけですが、血圧に及ぼすこうした影響は高齢者と女性に、より顕著に現れます。

※=「有意」とは、「確率的に偶然と考えにく、意味があると考えられる」を指す統計用語。

生活空間を1℃暖かくすると さまざまな効果が期待できる

 このようにさまざまなデータを積み上げるのには理由があります。それは、家庭内事故死は交通事故死より多いという推計があり、中でもヒートショックによる浴槽での溺死が一番多くなっているからです。消費者庁でも、入浴前の脱衣所や浴室を暖めることへの注意喚起を行っていますが、何よりも根本的な解決策は断熱改修にあると考えます。

 以上のことに加え、1℃暖かい住まいで生活すると脳神経年齢が2歳若くなるという解析結果が出ており、現在精細な調査が続けられています。また同じ条件下で、健康寿命が4年延びるという実態調査結果も出ています。さらには睡眠の質を上げ、学習・仕事の効率を高めることも、ゼロエネルギー住宅が生み出す健康の付加価値となっています。


健康・快適な家づくりの取り組み/石原 英喜 北洲総合研究所 所長

断熱住宅にかかる費用は 健康メリットと光熱費削減で早期に回収が可能

北洲総合研究所 石原英喜所長

 北洲では、暖かく、健康に住まえて、環境負荷の少ない住まいを目指し、「断熱」「蓄熱」「遮熱」の3つの熱のコントロールによる、機械設備に頼りすぎない理想的な住まいづくりを展開しています。 140mmの充填断熱に、不燃の外張り断熱材80mmを付加するダブル断熱で、耐火性を確保するとともに、建物の安全性や資産価値も維持し、同時に健康リスクも減らし、総合的な省エネを実現しています。

 蓄熱とは、潜熱蓄熱材入りの塗り壁で日射熱を取得し、安定した室内温度環境を維持すること。この潜熱蓄熱材は、吸熱と放熱を繰り返すことで温度を安定させる機能があります。

 遮熱は、南側の深い軒やブラインド・遮熱網戸を使って、日射熱をコントロールします。

 断熱住宅に投資した費用は、健康というメリットと光熱費削減メリットにより、トータルすると早期に回収できるというデータが試算で出ています。3つの熱をコントロールするパッシブ仕様住宅を新築されたお客様からは「熱帯夜にはエアコンを使うが、あとはエアコンオフでも26℃を保て、一年中春のような快適さ」「電気代も夜間電力使用のオール電化で冬も夏も1万円以下になった」という満足の声をいただいています。

(出典:仙台発・大人の情報誌りらく 2020.4月号)